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暗黒に光があった

クリスマス合同主日礼拝

説 教 「暗黒に光があった」 岸敬雄牧師

聖 書  創世記17章17~22節  ルカによる福音書2章1~7節

 イエス様の誕生の時、マリアはヨセフと婚約はしていましたが、まだ結婚する前にイエス様をお腹に宿しました。イエス様の地上での父親と考えられたのはヨセフでしたが、本当の父親は天父なる神であり、マリアは聖霊の力によって受胎したと聖書では語られています。

 その様な出来事は、私たちにとっては、とても不思議に思えます。しかし、マリアの受胎の出来事については、先立って類似した出来事が聖書には描かれています。

 例えば、本日読まれた旧約聖書の中に出てきた、ユダヤ人の父祖となった、アブラハムの跡継ぎとなったイサクが誕生した時の出来事です。

 もう年を取ってアブラハムは「百歳の男に子供が生まれるだろうか。九十歳のサラに子供が産めるだろうか。」と考えていました。しかし、神様の遣いが言われた通り、イサクを生むことが出来たのです。イエス様が生まれる前にも、その前例となる出来事が旧約聖書の中にも描かれているのです。

 新約聖書においても、イエス様の前に道を整える役目があると言われていた洗礼者ヨハネも、両親は年を取っても、子供を与えられることが無かったにもかかわらず、父親となるザカリアは、天使から「祈りは適えられた」と言うお告げを受けて、息子である洗礼者ヨハネを授かることが出来ました。

 そして、イエス様のお生まれになることも、昔から預言されていたことだと言うのです。そして当時の人々の行動は、神様のご計画が実行されて行くために、知らない内に関与していることもあるのです。イエス様がお生まれになった時、時の皇帝である皇帝アウグストゥスが一つの勅令を出したのです。その勅令とは、それぞれ住民登録を行う様にと言うものでした。

 皇帝アウグストゥスはローマの皇帝であり、ユダヤ人にとっては異邦人です。その皇帝が出した全領土に対する住民登録、これはいわば税金を納める人の人数を把握するために行われたものですが、それすらも神様のご計画を遂行するための道具として使われていたのです。

 どの様に使われていたかと言えば、人々は皆、住民登録を行うために各々自分の家系に従って出身地となる街へ向かって旅だって行ったのでした。

 イエス様のこの地上の父親と思われていたヨセフも、ダビデの家に属し、その血筋であったので、ガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ身ごもっていた、いいなづけのマリアと一緒に上って行ったのでした。そして、彼らがベツレヘムに居る内に、マリアは月が満ちて、初めての子を産んだのでした。それがイエス様です。イエス様は、お生まれになった直後に布にくるんで飼い葉桶に寝かされたのでした。

 旧約聖書のミカ書5章1節「エフラタのベツレヘムよお前はユダの氏族の中でいと小さき者。お前の中から、わたしのためにイスラエルを治める者が出る。彼の出生は古く、永遠の昔にさかのぼる。」と言われている預言が成就しているとマタイによる福音書では言っています。

 そして、なぜ飼い葉桶に寝かされたのかと言えば、「宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである。」と言うのです。住民登録のためにみんなが自分の出身地である町へと押し寄せてきていたので宿屋が満員になってしまっていたのです。しかし、それにしても、わたしたちの救い主であり、天父なる神様の独り子であられるイエス様がこの地上に訪れて下さった最初の場所としては、余りにもみすぼらしく思えます。

 そして、イエス様のことを証しする羊飼いや東方の博士たちのみが、イエス様のことを知ることができたのみで、ほとんど人目に付かない形でお生まれになられたのです。なぜそのような形でイエス様は、この地上にお生まれになったのでしょうか。

 暖かい布団もない、風も吹き込み、馬のにおいも立ち込めているような馬小屋でお生まれになったのは、それは、私たちの一番底辺にお生まれ下さったことを表しているのです。

 今の様な照明はない馬小屋で、わらなども多くありますから火をつけて明るくすることが出来ない中、今では考えられない暗い中に、この世の光となられるイエス様がお生まれ下さったのです。

 私たちは、この地上の人生において生きて行く時に辛いことが多くあることは確かです。しかし、どんな辛いことがあるとしても、私たちには決して消えることの無い確かな目標が示され、導き、標識としてイエス様と言う光が与えられているのです。

 その標識は、イエス様ご自身であり、その教えです。私たちはイエス様の教えを守り、イエス様に導かれながら、この試練の多い人生を、主イエス・キリストの光のもと歩み続けて行くことが出来るのです。私たちの事を誰よりもよく知って下さっている主イエス・キリストに導かれて。

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